久しぶりの観劇です。前回はお財布を忘れて、ちょっとドキドキの観劇だったので、今回は財布の確認はばっちりです。視力も正常になったので、眼鏡の必要はありません。座席は、博多座の会員席で1階サブセンターの前から2列目。チケットとお財布を確認して、いざ出発です。
今日の公演は、博多座の千秋楽です。客席には補助席も準備され、「満員御礼」が掲げられていました。博多座では座席での飲食が再開され、軽食程度のおにぎりとサンドイッチですが、販売もされていました。少しずつコロナ渦前に戻りつつあります。

主なキャストは以下のとおりです。
- エンジニア:駒田一
- キム:昆夏美
- クリス:チョ・サンウン
エンジニア役の駒田一さん
私にとって、今回の作品はエンジニア役の駒田さんの怪演に尽きます。
今まで、何度も「ミス・サイゴン」を観てきましたが、駒田さんのエンジニアは初めてです。
私にとっての駒田さんは、レ・ミゼラブルのテナルディエ役がおなじみでした。でも、駒田さんのエンジニア役は、もう4回目のキャスティングだったのですね。知りませんでした。。。
失礼かもしれませんが、駒田さんは、脇を固める実力のあるバイブレイヤーといった印象を持っていました。その駒田さんが、エンジニアという役で劇場の空気を支配し、光り輝いているのはオドロキでした。
駒田さんが最初に登場したときには、そのおじさん体型に(*_*)。「駒田さん、お腹を引き締めなきゃね。」なんて思っていましたが、物語に引き込まれると、「エンジニア=おじさん体型だよね」と納得です。
エンジニアって、女性を商売道具にしてピンハネする悪党ですよね。でもね、駒田さんのエンジニアは、混乱した時代を生き抜く術に長けている人であり、いつかはアメリカでも成功しそうな感じがしました。
そして、今回はじめて、エンジニアとはニックネームで、別に本名があること、フランス人とのハーフで、地を這うように生きてきたことなど、生い立ちについて語られていることに気付きました。今まで、観ているようで観ていなかったのですね。反省しきりです。
ちなみに、「エンジニア」という英語の意味には「うまく切り抜けていくやつ」「世渡り上手」というような意味があるようです。うん、エンジニアってそんな人ですよね。
クリス役のチョ・サンウンさん
クリスは、大好きな井上芳雄さんが私にとってはやっぱり一番です。
それは置いといて、チョ・サンウンさんは私にとって初めましての俳優さんです。筋肉質で、がっしりした体型からビジュアルで「兵士」という感じがよく出ていました。上半身を脱いだ姿は、「うひゃ~、マッチョだ!カッコイイ!」です。
以前、何かの番組で、「声楽家が固い腹筋をつけると、声量が出にくくなる」という主旨のことを聞いたことがあります。ところが、チョ・サンウンさんはシックスパックでした。それでいて、あの伸びやかな声が出るのですから、彼のポテンシャルは相当高いのだと思います。
私にとても響いたのは、エレンにキムと子どものタムことを告白するシーンです。大義のないベトナム戦争の過酷な状況の中に癒しを求めたこと、夢にうなされるほど必死に探したキムのこと、3年の期間を経てキムとタムが現れたこと、自分はエレンと結婚していること、いろんな葛藤を吐露するクリスの歌には、心情がよく込められていました。チョ・サンウンさんの表現力の高さを感じます。
だからなのか、キムとタムをバンコクに残して経済的支援を選択すると決めたクリスの判断には、「それも致し方ないのかもしれない」と思えました。今までは全く共感できなかったのですがね。
そして、このことが伏線となり、愛するタムだけでもアメリカに連れて行ってもらうために、キムが自殺するという結末に至ったということがよく理解できました。母親の愛情の強さには、感涙です。本当にキムは可哀そう。。。
思わぬ発見
今回の観劇で、思わぬツボはタム役の子役です。
キム役の昆夏美さんに抱かれるときは、しっかり抱きつくのですが、エンジニア役の駒田さんに抱かれるときは、力を抜いてお人形のようになっているのです。「何もねだらない、聞き分けのいい子」の演出して、母親とそれ以外の人で演じ分けているのでしょうか?「重たくないように」と配慮しているようにも見えて、可愛らしかったです。
それと、クリスに会いに行くときのタムのトレーナーがミッキーマウスであることが、アメリカンドリームでした。
カーテンコール

博多座は千秋楽でしたが、カンパニーは、静岡、栃木であと8公演あるそうです。でも、駒田さんは今日が大千秋楽だったため、カーテンコールの最後の登場は駒田さんでした。そして、最後の挨拶も駒田さんがされて、彼が主役の様でした。
ユーモアを交えた挨拶は簡潔にまとめられていて、スッキリしていました。
カーテンコールが終わって、観客の時差退場の時間に、緞帳が下りた舞台から三本締めの音が聞こえてきました。きっと駒田さんの大千秋楽を祝ってのものだと思います。この三本締めの音に対し、客席から拍手が沸いたことは言うまでもありません。
今回の公演は、「この俳優さんの演技が見たい」ではなく、「ミス・サイゴン」を鑑賞することができました。だからこそ、物語に引き込まれて、それぞれの役を私なりに深く解釈することができたように思います。このような上質な作品を堪能できて、至福の時間でした。
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