友人から依頼された博多座チケット

観劇のこと

演歌歌手のリサイタルチケットの依頼 

 ずいぶん以前のことですが、友人から「細川たかしさんの博多座のチケットを取ってほしい」との依頼がありました。聞けば、「知り合いの奥様が細川たかしのファンで、博多座でのリサイタルを観たいらしいから、ご夫婦2人分のチケットが欲しい。」というのす。私は、二つ返事で了解しました。

 公演2か月前に届いたチケットは前から5番目のサブセンター席だったことは覚えています。それから、チケットを友人に渡して、無事ご夫婦の手元にチケットが届いたはずです。

身元不明の贈り物

 そんなことも忘れていたある日、身に覚えのないカボスが大量に自宅に届いたのです。送り主の名前を見ても、「?」だったのですが、「カボス」というキーワードで友人のことを思い出しました。友人の出身地はカボスの名産地だったのです。

 友人に確認すると、このカボスはチケットを取って差し上げたことに対するお礼だということがわかりました。奥様がご病気で、退院したら見に行く予定であることを聴きました。

 そこで、早速カボスが届いたことの報告とお礼を伝えるため、送り主に電話をしました。「割といい席だったので、ご夫婦で楽しんできてくださいね。」と。

チケットを依頼した理由

 その時、お電話で語られたことが、予測もしなかったことでした。

 お電話に出られたのはご主人でした。奥様は、細川たかしさんのファンで博多座のリサイタルを楽しみにしていたそうです。しかし、奥様はがんをわずらい、容態が悪くなってしまったとのことでした。ご主人は、残された時間に奥様の願いをかなえあげたいと、私の友人に相談したようです。友人は私が博多座会の会員であることを思い出し、私に頼んでみようと思ったようです。

 そして、ご主人は「もう、間に合わないかもしれない。」と、声を詰まらせながら言うのです。かける言葉も見つからず、励ましの言葉など無用であることもわかっているので、「お大事に」とお伝えして、この電話を切りました。

 私が友人からチケットの申し込みの依頼を受けて、2か月が経過していました。ご主人がリサイタルを夫婦で見に行く計画を立てた頃は、奥様はお元気だったのでしょう。2か月の間に奥様の病気は進行してしまったようです。そして、公演の幕が上がるまでの1か月は絶望的な程、長い時間に思えたのでしょう。

 その後、奥様がリサイタルを観ることができたかどうかは、私は知りません。悪い結果だったら辛いので、あえて友人に聞くことは避けていました。奥様の残された時間に思い出作りをしようとしたご主人の気持ちは幾何かわかりません。あったことはないのですが、ご夫婦の人生にほんの少しかかわれたことを思い出しました。

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