人間ドックの結果に翻弄

私のこと

 人間ドックは、現役時代には毎年同じ医療機関で受けていました。結果の推移がわかり、自分の健康管理の指標として年間行事の一つでした。しかし、定年退職後はさぼっていました。

久しぶりの人間ドック

 定年退職後の再任用の給与は、半分近く下がりました。そして、福利厚生も正規雇用時代に比べると明らかに劣化します。人間ドックの場合は、検査項目が減り、自己負担額が高くなりました。「職場への貢献度が低くなる」ということなのでしょう。多くの職場では当たり前のことみたいですね。

 昨年7月に退職。気力も体力も充実して毎日の自由を満喫していましたが、今年4月、縁あって復職しました。そして、人間ドックの案内が届き、久しぶりに受診してみました。

 受診したのは7月。現役時代に検査をしていた医療機関ではないところを指定されていました。結果が届いたのは8月初旬。医療関係の仕事をしていたこともあり、記載内容は一般の人より理解できます。その時、ざっと目を通したような記憶がありましたが、そのまま結果は机の中へ。。。

 ところがです。ところが、職場の「安全衛生管理者」から「定期健康診断結果に基づく再検査・精密検査の受診について(通知)」が届きました。日ごろの私なら、「ああ、あれね」と思って放置するのですが、今回は、「え、何かあったっけ?」と思ってしまいました。人間ドックの受診が3年ぶりだったこともあります。

人間ドックの判定区分

 今回の結果判定の区分は以下のとおりです。

 A 正常範囲 今回の結果は基準値内(いわば”異常なし”)
 A1 措置不要 基準値を少し外れるものの特別の措置は要しない
 B1 要観察 経過観察を要する所見
 Z1 要管理継続 現在、医師の管理指導を・受けている疾患
 Z2 要治療継続 現在、医師による治療を受けている疾患
 B2 要管理 医師による観察・指導が必要な異常所見
 V 要再検査 再び同一検査を行い、評価が必要な所見
 W 要精密検査 適切な対応方針を決めるために精密検査が必要
 C 要治療 今後、医師による治療が必要となる異常所見

人間ドックの結果に思わぬ所見が。。。

 机の中から人間ドックの結果のお知らせを取り出してみてみると、腹部エコーの結果で「すい臓腫瘤」との記載がありました。「え~!!」

 判定区分は「B2 要管理 医師による観察・指導が必要な異常所見」です。

 私、医療関係の仕事をしていました。「すい臓腫瘤」の持つ意味はわかります。この時の「すい臓腫瘤」とは、「すい臓がんを含む何らかの異物をエコーがとらえたよ」ということです。

 判定が「医師による観察・指導が必要な異常所見」ということは、「要再検査」や「要精密検査」よりは深刻度が低い様に見えますが、病気によっては本質はもっと深刻です。

 気になって、3年前にに受けた人間ドックの結果を遡って見てみると「すい臓:正常 尾部不明」の文字が。。。。

結果を受けて私の想い

 頭の中にいろんな思いがぐるぐると回りました。

「ありゃ、3年前はすい臓全部をきちんと見るとができていない正常だったのね。。。」「人間ドックから3年。腫瘤が育つのに十分な時間。。。」「今回の結果が出て、3か月経ってしまっているのね。。。」

 頭に浮かぶのは「すい臓がん」の最悪の結果。

 すい臓がんは、自覚症状が現れた段階ではほとんどが手遅れです。また、治療が可能な場合でも、その内容がとても過酷であることは知っています。頭の中がどんよりしてしまいました。

 例え「B2 要管理」であっても、一旦CT検査くらいは受けておく必要があると考えました。

 「安心して毎日を送るために、検査を受けて白黒つけておかなければならない。」と考えました。エコー検査の結果を受けて、CTで診てみると「腫瘤」はなったということは、よくあります。

Aクリニックの場合

 私の住む自治体には、医療機関を検索するインタネットサイトがあり、自分が必要とする医療機関の機能を選択すると自宅近くの医療機関を一覧で見ることができます。早速、医療機関でCTとエコー検査ができるところを探してみるました。今までかかったことがあるAクリニックが一覧にありました。

 早速電話をしてみると、「すい臓は、専門外なので診れない」でした。

Bクリニックの場合

 仕方がないので、次を探しました。

 クリニックは医師が一人の場合がほとんどなので、その医師が診ることができるか否かが重要です。クリニックがホームページを開設していて、医師の経歴などが掲載されていれば確認できますが、結構そうではないところは多いものです。その場合は、標ぼう科目だけで判断することになります。

 平日お休みの日に、一覧にあったBクリニックに直接行ってみました。ここは、過去に受診したことはないので、クリニックのホームページで医師のキャリアを確認して、選択しました。

 受付で「人間ドックですい臓腫瘤を指摘され、腹部エコーの再検査かCTを撮ってほしい」ことを伝えました。すると、受診手続きをすることなく暫く待たされて、「うちでは診れない。この検査結果なら、MRIなどが必要になる可能性があるので、大きな病院に行ってください。この健康診断の結果があれば、受診できます。」との説明を受けました。

C病院の場合

 確かに、人間ドックの結果で「要治療」「要精査」との記載があれば、大規模病院の受診も可能です。しかし、今回の結果は「要管理」なので、「大丈夫かな?」と思いました。でも、手をこまねいているより行動です。さっさと、過去に乳がんの治療をしたC病院に行きました。

 C病院で手続きをしようとしていると、担当者から受診目的を尋ねられました。すると、懸念していた通り「要管理」の結果では、「この大規模病院の受診はできない」との説明でした。「かかりつけ医をとおして紹介状や受診予約をしてください」と手続きのパンフレットを渡されました。

「う~ん、やっぱり。。。」

かかりつけのDクリニックでも

 過去にかかったAクリニックでも、初めてのBクリニックでも「専門外だから」と断られ、Bクリニックから指示されたC病院では「クリニックを通じて予約をして」と言われてしまいました。

 困った私は、時々体調を崩したり、インフルエンザの予防接種などで受診していた「循環器科」を標ぼうしているDクリニックに行くことにしました。そして、前述の事情を話し、「人間ドックの結果で紹介状を書いてほしい」とお願いしました。しかし、Dクリニックでも「専門外」で「紹介状は書けない」と言われてしまいました。

やっと検査ができたEクリニック

 4軒から断られると、さすがにちょっと心萎えます。「まあ、B2 要管理だから」と、受診を辞めることもできます。

 次の受診候補は、CTの性能や医師のキャリアから受診の順番が下位だったEクリニックです。Eクリニックに行くと、簡単に「検査できますよ」と言われました。

 他の患者さんがほとんどいなかったこともあり、すぐにCTを撮影してもらうことができました。そしてしばらく待つと、結果は「すい臓腫瘤の所見はない」とのことでした。

医療の意外な高いハードル

 この日、8時30分に自宅から出かけ、EクリニックでCTの結果を聴くまでに3時間。それぞれ、受付の段階で断られていたので、1軒あたりの所要時間が短かったことや自家用車で移動したこともあって、大した時間はかかっていません。所要時間だけなら、簡単に解決したと言えます。

 私自身、医療の知識があり「すい臓腫瘤」の持つ意味が分かるので、「CTを撮ってもらって、白黒はっきりしたい。毎日を安心して暮らしたい。」という思いで、ここまでたどり着きました。しかし、自覚症状がないこと、人間ドックの結果が「要管理」なこと、4軒の医療機関から断られたことなどを考えると、「普通の人ならあきらめるのではないかな?」思います。

 私は、病気の発見が遅れ、治療ができなかった人を何人も看てきました。今回の私のエピソードみたいなことは、日常に散見されるようです。クリニックの「専門外」、大規模病院の「適応外」が高いハードルになることを身をもって経験した1日でした。

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