朝夏まなとさん主演のミュージカル「モダン・ミリー」を博多座で観てきました。今日は、その感想です。
エントランスホールには何の装飾もありません。3日間の公演だから仕方ないか。。。
ジョークの難しさ
「コメディのミュージカルはヒットしない」というジンクスがあるようですが、私はこれに同意します。コメディは、ジョークの意味が分からなければ、笑いをとることはできません。そして、笑いを誘うジョークは、その時代背景をシニカルにとらえたハイセンスなセリフなので、観客はその作品の時代背景を理解しておかなければ、ジョークを楽しむことはできません。翻訳物ならばなおのことです。
今回の作品でいえば、アメリカの文化になじみの深い人であれば、ジョークの意味が分かって「クスッ」と笑えたり、大爆笑したりできるのだと思います。博多座会報誌「喝采」で中島薫さんが「モダン・ミリー」鑑賞ガイドにあるように、「全編にナンセンス・ギャグがさく裂」していたのだと思います。でもね、残念ながら私は海の向こうのアメリカの1920年代の文化に明るくはありません。当時、人気者だった俳優や歌手を知りません。だから、セリフを聴いて笑えないのです。同じような感想を持った観客は多かったのではないでしょうか?だって、皆さん笑わないのですもの。。。。
この舞台のストーリーを楽しむためには、1920年代のアメリカの文化を勉強して観劇した方がよさそうです。
笑いを取るには、オーバーアクション
第1幕で客席が沸いたのは、田代万里生さんの佐賀弁のセリフのみでした。(主演の朝夏まなとさんの出身地を意識して、日本の脚本家がセリフにしたものと、アフタートークショーで説明されていました。)あとは、ジョークらしきセリフには全く客席は反応しませんでした。
しかし、第2幕では客席が沸く場面が何度もありました。それは、ジョークではなく、カリカチュアライズした「トレヴァー・クレイドン」役の廣瀬友祐さんの圧巻の演技です。長身でイケメン、スタイル抜群の廣瀬友祐さんが、犬の物まねをしたり、恋に落ちたミス・ドロシー・ブラウンに振られてカートに飛び乗って舞台から捌けたりと、芸人顔負けの大胆な演技に対してです。今回のコメディとしての「モダン・ミリー」を成功させた立役者は廣瀬友祐さんではないかと私は思います。
豊富な見せ場
この作品は1967年にミュージカル映画として上演されたもの。「メリーポピンズ」や「サウンドオブミュージック」で主演をしたジュリー・アンドリュースさんが主演をして高い評価を受けたとのことです。もう50年以上前の作品ですが、古き良き時代でミュージカル映画全盛の頃ですよね。だから、ミュージカルスターの実力をいかんなく発揮できるシーンがたくさんあります。主演クラスの役者にはソロの歌唱場面がふんだんにあり、ダンスシーンはチャールストンあり、タップダンスあり。「禁酒法時代のアメリカって、こんな感じ」というナンバーを堪能できます。
こんな演出は、ミュージカルスターにとって役者冥利に尽きるのではないでしょうか?ミュージカル好きのファンにも堪えられません。
ただ、古さは否めません。油断をすると眠たくなります。(お隣のご婦人はいびきをかいてお休み中でした。)
ちょっと狭めの舞台
この作品の東京での上演は、中規模劇場である「シアタークリエ」でした。そのためか、マンハッタンの摩天楼を模した大道具が舞台両サイドに配され、舞台が日頃より狭くなっています。またこの大道具で死角ができるようで、2階席の舞台に近い桟敷席一部クローズされていました。
そんな日ごろより狭い舞台での上演でしたが、それが役者をより大きく見えました。特に朝夏まなとさんの長い手足がより長く美しく動くので、ダンスナンバーではとても見栄えがします。
また、ダンサーたちの群舞も、それぞれの距離が近いので、たくさんの人が出演しているように見えて迫力があります。「出演者の人数に応じた器(舞台)であるということは、重要なんだな~」と感じたところです。
また出た、リピーター割
この「モダン・ミリー」は3日間4公演です。短期公演のためか装飾のない劇場内に入ると、主役のミリーと同じ赤いワンピースを着た女性を数名発見。お仲間から、「あら~、ミリーちゃんになってきたのね💞」と褒められていました。熱烈なファンがいるんですね。
そんな時、劇場の壁に「リピーター割」の掲示がありました。残念ながらまだチケットは残っているようです。最近の博多座はこの手法をとるようになりましたね。
最初に書いたように、ミュージカルコメディの難しさがあるのかもしれません。今回の舞台で感じた演者の実力、熱量から考えると、チケット完売でも当然なのに残念です。翻訳物のジョークを理解することの難しさは誰もが知るところなだけに、対策はないものなのでしょうかね。。。役者が可哀そう。。。
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