博多座「新三国志 関羽編」を観てきた

観劇のこと

 歌舞伎を観ることはあっても、スーパー歌舞伎は観たことはありませんでした。「古典芸能の歌舞伎に、何を組み合わせたらスーパーなの?」って、思っていました。特に「ワンピース」での猿之助さんのルフィ姿の写真には、ちょっと引きました。

 しかし、今回は私にとってはなじみのある三国志だったので、食わず嫌いは良くないと思って、観てきました。

 下の写真は2階席に向かう階段の踊り場に飾られていたポスターです。右側のポスターには役者のサインが入っています。

 博多座会でのチケットは1回C列センターブロックです。日ごろにない良い席です。「こんな時に運を使わなくても。。。」と思ってしまいました。

 観劇後の感想としては、歌舞伎の様式美はきちんと残されて、見栄を切るところはきっちりと、花形役者の見せ場にはこれでもかと時間を取る、「現代語の歌舞伎」ですね。わかりやすいです。

舞台装置

 舞台装置はシンプルで豪華。平面の二次元世界です。役者も多くの場面で横並びに配され、物語は進みます。そして、舞台に対して立体的な位置になるのが花道での演技となるのでしょうか。こういったところは、古典の歌舞伎の伝統を守っているように見えました。

 そして、今では他の演劇ではほとんど見なくなった「幕前」の場面が多くありました。

 最近では、幕は開けたままで立体的に場面転換をすることに慣れているため、懐かしい感じがしました。

 今回、前から3列目だったので、幕前の役者が3人であっても、空間は埋められているように感じましたが、後方の席の人はどうだったのでしょう?

 クライマックスには大量の水を使った演出があります。前から10列目くらいまでは水しぶきがかかるとのことで、防御用のビニールシートが配られていました。

市川猿之助さん(関羽)

 もう、この方の芸達者なところは、言うに及びません。この方が登場すると場の空気が変わります。説得力あるセリフ回しで、劉備とただ手を握るだけの心を許しあうシーンには、不覚にも涙がこぼれました。

 そして、エンディングで宙乗りを観ることができます。背景は桃の花。今盛りの花で本当にきれいです。猿之助さんが昇天するまでの間、大量の桃の花びらが舞います。3階席だったら、舞い上がっていく猿之助さんを観ることができたでしょう。ここで「前方の良い席は、宙乗りを堪能できない」という残念ポイントがありました。

 そうそう、関羽が5万人の兵士や捕虜との引き換えに投降する前夜、臣下とともに好きな人を告白しあう、恋バナのシーンがあります。ちょっと、ほんわかしました。

市川笑也さん(劉備)

 男である笑也さんが、本当は女である劉備が、男としてふるまうという、2回性転換をしている難しい役どころです。この役は笑也さんの当たり役というのは、よくわかります。男でも女でもない、ハイトーンボイスで表現しているのです。

 戦闘の場面では、なよなよした演出だったので、「女形はこう」という歌舞伎の演出の固定概念を感じました。私は、女であっても男として生きていく決心をした時点から、男勝りであってほしいと思ったので、「なんだかな~。」という感想を持ちました。まあ、歌舞伎は数年に1回程度しか見ない人間の戯言です。

坂東新吾さん(香渓)

 男が女を演じるのですから、女形の演技も様式美だと思っています。そこでツボだったのが、坂東新吾さんの「香渓」が歩くシーンです。上体が微塵も動くことなく、滑るように歩くのです。きっと日本舞踊で鍛えられた足腰だからできる、そう「腰前がいい」のです。これは、ジャージーボーイズでの尾上右近さんにも感じました。優雅な動きは、女形の芸なのでしょうね。

 そんな目で他の女形さんを見てみると、同じように滑るように歩いていました。でも、坂東新吾さんがお気に入りでした。

市川團子さん(関平)

 「歌舞伎界のプリンス、みつけた」です。香川照之さんの息子さんですね。

 私は、サラブレッドの歌舞伎役者がアイドルのように手足が長く、頭が小さくなるには、「あと1世代は必要」と思っていました。でも、市川團子さんは小柄であること以外は、見た目はばっちりです。

 重要な役どころを演じていて、クライマックスの大量の水を使ったシーンでは、獅子奮迅の活躍をします。そして、見せ場にはたっぷり時間をもらい、大きな見栄を切っていました。その時に、びしょ濡れの体から水しぶきを放つのが可愛いのですよ。「キャー、子犬みたいで!」と客席から目をハートにして見つめていました。

 話はそれますが、2月21日に市川猿之助さん監修の「夢見る力」という特別舞踏公演があります。出演は市川團子さん、坂東新吾さん、市川青虎さん、中村福之助さんです。歌舞伎界の若い力の活躍できる場をつくり、新たなファンの獲得を試みているようです。この紹介用画像が幕間に流れます。これを見終わってからトイレタイムにした方が楽しめますよ。

平日昼公演の悲しさ

 かなり空席が目立ちました。私の席の真後ろは、センターブロック4列目の一等席なのに5席くらい並んで空席がありました。幕間のトイレに行列はなく、終演後の時差退場もありませんでした。観客としては楽なのですが、商業演劇としてはちょっと残念ですよね。宙乗りをしている猿之助さんは、空席がはっきり見えたでしょう。

 それ以上に今回つくづく感じたのが、観客の問題点です。

 今まで、何度か博多座で歌舞伎を観てきましたが、今回のように演目中におしゃべりをする人に囲まれたのは初めてです。皆さんご高齢で周りが見えず、「自分のことで精一杯なんだろうな。」という感じです。

 私は舞台にのめりこむことができず、「やめて~」と思いました。

 でも、そもそも歌舞伎自体が大衆芸能であったし、「大向こう」が飛び交う世界なのですから、「おしゃべりをして何が悪い」といったところなのでしょう。これが平日昼公演の常で、知らない私が悪いのであれば、今後は夜公演や土日祝日の公演を選べば解決しますけどね。

 それでも今は、ちょっと残念気分です。

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